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日記

 同じ通りにある古布屋さんが、店の前を通るたびに声をかけてくれる。いつも「100円ショップ行ってくるよ」「帰るよ」くらいなのだが、今日は
「ねえ、宇田さん」
と立ち止まった。
「うちは新報だから今まで見てなかったけど、このまえ友だちがタイムス持ってきたのよ」
私が沖縄タイムスに書いたコラムを読んでくれた。
「毎月書いてるの?」
「いえ、2ヶ月に1回です。次で終わります」
「なーんだ」
通りすぎる。また戻ってきて、
「末は作家ね」
といいながらまた通りすぎる。末っていつだろう。
 いつも襟のついたシャツに古布のベスト、ジーパン、コンバースで背筋を伸ばして歩いている。70歳をすぎているようにはとても見えないかっこいい女性で、今年は布を探しにネパールに行くという。私の肩掛け鞄もつくってくれた。

◇◇◇

 お酒を飲んで日付も変わるころ、自分の店の近くにとめた自転車を取りに行ったら、チェーンの鍵が電柱とタイヤにまたがってかけられていた。私はこんなまめなことはしない。ものすごく親切な誰かが鍵のダイヤルを勝手に合わせて外し、つけかえてくれたということだ。
 次の朝、自転車置き場の向かいの洋服屋さんに声をかけた。長い棒でハンガーを天井近くに引っかけている。
「昨日、自転車ありがとうございました」
「いやいや、夜は危ないと思ったからさ」
 珍しく照れている。やっぱりこの人だった。前に私の自転車の鍵を見て、
「こんなのすぐ外せるよ」
と本当に外してみせた。
「ダイヤルが4列のじゃないとだめだよ」
といわれたのに、そのまま3列のを使っていた。
 何日かたって、自転車のかごいっぱいに本やら食べ物やら載せて走っていたら、横断歩道で鍵が飛び出し、落ちた。すぐ信号が赤になってしまったので拾えず、渡りきって待った。青になって引き返してみると、鍵の先が曲がって鍵穴にささらなくなっていた。4列のを買って帰った。

Posted by uchinan : 16:53 | Page Top ▲