高文研

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お札

 前々回、「札束が本の束に見えたり、本の束が札束に見えたりする」と書きながら、クレームが来たりしてと少しだけ思ったけれど、来なかった。どんなに花の好きな花屋でも、花束が札束に見える瞬間はあるのではないだろうか。商売をしていたら。

 私の本と相手のお金を交換して、帰りにそのお金で野菜を買ったら、ああ本が野菜になったんだと思う。お店やさんごっこのように毎日を過ごしている。

 家に帰るとその日の売上と現金が合っているか確かめる。それから両替袋を出して、明日のおつりをつくる。
 おつりの金種は少しずつ変わっている。最初は前のお店の人に教わったとおりにしていた。「み~きゅるきゅる Vol.7 牧志公設市場」が発売されてからしばらくは10円玉が足りなくなり(定価360円)、10円玉を増やし、そのぶん50円玉を減らした。『もの食う本』を扱っているあいだは5円玉と1円玉も少しずつ用意した(定価777円)。

 おつりをつくりながら気になるのは、お金の状態である。特にお札は小銭入れに八つ折にされていたのや水に濡れたのや洗濯してしまったのやいろいろ受けとるので、これはとてもお客様にはお返しできないというのがある。

 では、いつ使うのか。私がお客として買い物に行ってこれを出したら、まためぐっていく。誰がどこで止めるのか。
 銀行の両替機に入れてみる。何度か拒まれたのを無理やり伸ばして読み込んでもらい、500円玉に替える。何事もなかったかのようだ。傷んだお札はきっとこのまま回収されて、再び市場に出ていくことはないのだろう。

 古本は状態によって価値が変わるのに、お札は変わらないうえきれいなものに交換するのも簡単で、いいなあと思う。

Posted by uchinan : 16:28 | Page Top ▲

I'm open

 今日は朝一番の歯医者のあと、店に行く途中で壺屋のよかりよさんに寄った。

 シャッターが3分の1くらい閉まっていて、準備中かなと思いつつ近づくと、「open」という小さな看板が出ていた。
「おはようございます」
「あ」
 店主の八谷さんは明日からはじまる増田良平展のうつわを並べている。預からせていただいているNAHA ART MAPを受けとり、うつわを見るともなく見ていたら、どんどん惹きこまれていった。夢みたいに明るくてわくわくする。手にとって眺めると、絵本を読んでいるような気分になる。うつわのかたちをしているのが不思議なくらい、なにか別のもの、見たことのないものに見える。

「ここ1年くらいで彼からとてもおもしろいものが出てきたから、今やって欲しいと思って」
 今回の展示のために増田さんは180のうつわを焼いたそうだ。作家がひとりで考えてつくるだけではなく、こんなのはどうかと持ちかける人、それを売る人がいて初めてできるものもあるのだ。本と一緒だ。
「こちらも完売させるつもりだから」
 言い切ることばに、八谷さんの期待も自信も責任感もすべて表れている。

 また来ますと店を出て振り返り、さきほどの看板は「open」ではなく「I'm open」であるのに気がついた。
 そう、「We're open」という看板を見るたびに、ひとりでやっている店はどうするの? と思っていた。ただの慣用句であるにしても。
 「I'm open」
 これもまた、自信と責任感の表れ。
 私のところは一目瞭然なので看板はつけないけれど、気持ちはこうでありたい。

Posted by uchinan : 14:28 | Page Top ▲