高文研

トップページ >> |書評|沖縄苗字のヒミツ

|書評|沖縄苗字のヒミツ

 黙って座っていれば、ばれないこともある。でも、一言でも口をきいたり、名札をつけてレジに入ったりしていると、
「本土の人ね」
といわれる。

 沖縄出身かそうでないかは、名字でほぼわかる。どうしてこんなに特徴的なのか、ずっと知りたかったのに、本がなかった。地名や家系の本はあるのに。待望のこの本は、那覇店で先週の売上ランキング1位に輝いた。

 なぜ地名と同じ名字が多いのか、同じ漢字でも読み方がいろいろあるのか。素朴な疑問に、本書は史料の裏づけによって答えてくれる。そして、沖縄の名字は本土との関係によって変遷を強いられてきたことを思い知らされる。

 沖縄で多い名字のひとつ、「金城」。那覇店にも金城さんが4人いる。しかし「キンジョウ」と読まれるようになったのは、ほんの60年前のことだという。それまでは「カナグスク」「カナシロ」「カネシロ」が主流だった。東京や横浜から引き揚げてきた「キンジョウ」さんが持ち込んだ読み方ではないか、と著者は推測している。

 また、昭和初期に生きた島袋盛敏という教育者の印象的なエピソードがある。
 勤務先の学校の生徒に「先生の苗字は変ね」といわれ、自分の子どもへの影響も考えて、名字変更についての家族会議を開く。その結果、「皆が偉くなったら、『島袋』という苗字も、ちっとも変ではなくなるでしょう」という妻の意見もあって、名字を変更しないことに決まった。
 いまや、島袋さんといえば元スピードの寛子さんや興南高校の洋奨さんなど何人ものスターがいる。誰も変な名字だとはいわないだろう。

 沖縄戦から66年、日本復帰から39年。短い時間で沖縄県は激動し、今も激動のさなかにある。金城さんに、また島袋さんや仲村渠さんに、たくさんの人に、名前のことやいろいろな出来事の話を、聞いてみたいと思う。

-----
『沖縄苗字のヒミツ』武智方寛著、ボーダーインク

Posted by uchinan : 20:10 | Page Top ▲