高文研

トップページ > 2011年04月

続々・沖縄県史

 さらに、前回のつづき。

 思いがけず、新沖縄県史の刊行予定をちらりと耳にすることができた。
 それによると、

1.通史編・各論編・図説編・事典編・索引編からなる本編シリーズ
2.資料編シリーズ
3.概説書、ビジュアル版などからなる普及本シリーズ

 などが企画されているらしい。現時点では「各論編」「資料編」「ビジュアル版」の一部が刊行されているというわけだ。

 「各論編2 考古」の「発刊のことば」には1994年から編集を開始したとあるから、すでに17年経っている。古い沖縄県史は14年で全巻刊行されたことを考えると、だいぶゆっくりしている。それだけ、資料や研究者や扱う内容が増えたということなのだろう。ひょっとすると、半世紀がかりの大仕事になるのかもしれない。じっと待っていよう。

 「各論編5 近代」は、学校や関係機関への無償配布分のほかに、販売用も印刷された。
「同時に復刻出版したのは初めて」
と聞いて、首をかしげた。「同時に復刻」という日本語がよくわからない。これも調べてみた。

 「復刻」といわれて、

【復刊】 絶版になっていた書籍類を再び刊行すること(大辞林)

という意味だと思った。過去に出ていたものを、もう一度出し直す。時差があると思いこんでいた。実は、そうとも限らないらしい。

【覆刻|復刻】 書籍類で、原本そのままに新たな版を作って出版すること。また、その物。 (大辞林)

 「再び」というよりは、「もうひとつ」という感じだろうか。無償配布用の「原本」と、販売用の「新たな版」だと考えれば、「同時に復刻」されてもおかしくない。「リプリント」と言いかえると、少ししっくりくる。まだまだ言葉を知らないなと反省する。

 残る疑問は、なぜ「新沖縄県史」ではなく「沖縄県史」という名前で刊行したのかということである。今回のが終わったらまたさらに新しいものを出していくという意気込みだろうか。それならば「第二次」などと銘打ってもよさそうである。巻が増えるごとに、図書館でも書店でも混乱していきそうで、余計なお世話だと知りつつやきもきしてしまう。

 ひとまず今は、10冊売ろう。10冊で10万5千円!

Posted by uchinan : 15:16 | Page Top ▲

続・沖縄県史

 前回のつづき。

 雨の土曜日、沖縄県立図書館に行き、『沖縄県史』を探す。大きさのまちまちなのが何段も並んでいて、どれが目指すものなのかわからない。奥付を見て、一番後ろにある「各論編」3冊が新しい『沖縄県史』であると判断する。

 最初に出たのは「各論編2 考古」。奥付の発行日は2003年12月25日。当時の県知事であった稲嶺惠一が「発刊のことば」を寄せている。
 これによると、米国統治下の1963年に『沖縄県史』全21巻の編集に着手し、1977年に完了した。これは黒船来航から太平洋戦争終結までの沖縄県の歴史を扱い、先史時代、琉球王国時代および現代史は未編集だった。これらの時代まで網羅した「新沖縄県史」の編集を1994年から開始し、通史編、各論編からなる全38巻の刊行を目指してきたという。発行は沖縄県教育委員会となっている。

 2回目の配本が2005年3月の「各論編4 近世」。1609年の薩摩島津氏の侵攻から、1879年の琉球処分における沖縄県設置までを取り上げる。
 3回目が2010年2月の「各論編3 古琉球」で、11世紀後半ないし12世紀初頭のグスク時代から、1609年の薩摩島津氏の侵攻まで、すなわちほぼ日本の中世を論じている。

 3冊とも奥付には(非売品)と明記されている。先日入荷した4回目配本の「各論編5 近代」から、市販するようになったということだ。前3冊もぜひ流通に乗せて欲しいものである。

 全21巻の『沖縄県史』は、1972年5月を境に発行が琉球政府から沖縄県(あるいは沖縄県教育委員会)に変わっている。5月15日の本土復帰のためだ。さらに、稲嶺元知事の「発刊のことば」には「全21巻」とあるが、実際には各論2巻と別巻が加わり、全24巻となっている。1989年に国書刊行会から復刻版が出ている。

 新しい『沖縄県史』は、通史編、各論編の全38巻とは別に、「ビジュアル版」全13巻と「資料編」の一部が刊行されている。どれが古いほうでどれが新しいほうに属するのか、混乱してきた。

 ここまでまとめたところで、思いがけない情報が入ってきた。さらに、つづきます。 

Posted by uchinan : 23:59 | Page Top ▲

沖縄県史

 編集工房東洋企画の新刊、『沖縄県史 各論編5 近代』
 税込10500円、688ページ、B5。チラシを見て、反射的に「10」と数を入れていた。翌日すぐ入荷した。10冊の重み、積み上げられた迫力に、笑いがこみ上げる。1階の新刊台や2階の沖縄本の棚など、計4ヶ所に散らして、売れるのを待つ。

 本を愛し、専門書を愛するある上司は、
「高い本を売りなさい」
とよく言っていた。500円の本を10冊売るのも5000円の本を1冊売るのも同じ。それなら、5000円の本を1冊売るほうが労力が少ないし、おもしろい。棚がきつくなると、つい売れそうにない厚くて高い本を抜いてしまうが、それでは棚がつまらなくなる。高い本を買ってくれる上客を逃すことにもなる。もちろん値段と本の質はまた別である。
 教えを守り、売れなくても高い本は大事にする。ましてや、売れそうな高い本が発売された日には小躍りしてしまう。沖縄県史、しかも扱われているのは琉球処分から沖縄戦にかけての激動期である。これが売れなくて何が売れるのか。
 帯には、
「近代日本へと組み込まれていく沖縄県民の苦悩と生へのひたむきな情熱、郷土を愛した人々の活躍を35名の論者が鮮やかに活写する!」
とある。「県史」というとお役所仕事のようだが、それ以上の情熱を感じる。ますますワクワクしてくる。

 さて、「各論編5 近代」という、中途半端な、しかし需要のありそうな巻がいきなり出た。この先の刊行予定は? と本を開いて、はて? と思う。沖縄県立図書館や沖縄県教育委員会のHPを見てもまとまった情報がない。あちらこちらをつなぎ合わせた末、どうやらすでに3冊刊行されているらしいという結論に至った。もう少し調べてみよう。
 つづく。

Posted by uchinan : 00:59 | Page Top ▲

|書評|沖縄苗字のヒミツ

 黙って座っていれば、ばれないこともある。でも、一言でも口をきいたり、名札をつけてレジに入ったりしていると、
「本土の人ね」
といわれる。

 沖縄出身かそうでないかは、名字でほぼわかる。どうしてこんなに特徴的なのか、ずっと知りたかったのに、本がなかった。地名や家系の本はあるのに。待望のこの本は、那覇店で先週の売上ランキング1位に輝いた。

 なぜ地名と同じ名字が多いのか、同じ漢字でも読み方がいろいろあるのか。素朴な疑問に、本書は史料の裏づけによって答えてくれる。そして、沖縄の名字は本土との関係によって変遷を強いられてきたことを思い知らされる。

 沖縄で多い名字のひとつ、「金城」。那覇店にも金城さんが4人いる。しかし「キンジョウ」と読まれるようになったのは、ほんの60年前のことだという。それまでは「カナグスク」「カナシロ」「カネシロ」が主流だった。東京や横浜から引き揚げてきた「キンジョウ」さんが持ち込んだ読み方ではないか、と著者は推測している。

 また、昭和初期に生きた島袋盛敏という教育者の印象的なエピソードがある。
 勤務先の学校の生徒に「先生の苗字は変ね」といわれ、自分の子どもへの影響も考えて、名字変更についての家族会議を開く。その結果、「皆が偉くなったら、『島袋』という苗字も、ちっとも変ではなくなるでしょう」という妻の意見もあって、名字を変更しないことに決まった。
 いまや、島袋さんといえば元スピードの寛子さんや興南高校の洋奨さんなど何人ものスターがいる。誰も変な名字だとはいわないだろう。

 沖縄戦から66年、日本復帰から39年。短い時間で沖縄県は激動し、今も激動のさなかにある。金城さんに、また島袋さんや仲村渠さんに、たくさんの人に、名前のことやいろいろな出来事の話を、聞いてみたいと思う。

-----
『沖縄苗字のヒミツ』武智方寛著、ボーダーインク

Posted by uchinan : 20:10 | Page Top ▲

久高オデッセイ

 仙台ロフト店が営業を再開した。うれしい。とてもうれしい。仙台ロフ子さんのブログを読み、本屋で働く幸せを私も噛みしめる。仙台店の方々も、どうか早くこの幸せを取り戻せますように。

-----

 晃洋書房さんから、本が届く。『久高オデッセイ』と、『コンタクト・ゾーンの人文学 第1巻』。まだ発売されていない本である。

 「これから出る本」という無料冊子がある。日本書籍出版協会が月に2回発行している、新刊案内である。この3月下旬号に、「沖縄本を探せ!」というコラムを書かせていただいた。数ある新刊・既刊のなかから沖縄関連本を見つける苦労と面白さについて書き、「出版社から情報がもらえたらいいのだが」と書いた。
 それを読んで、「今度、沖縄関連の新刊を出します」と電話をくださり、本まで贈ってくださった。ありがとうございます。

 九州大学出版会の方も、「これから出る本」を読んで自社の沖縄関連本のリストをFAXしてくださった。そのなかで『中山詩文集』はこれまで入れていなかったので、さっそく注文した。
 『モノから見た海域アジア史』がよく売れていますと書き添えたところ、「九大生協では〈海域〉とつく本がよく売れていると店長がおっしゃっていました」という返事が来て、一緒だな、海でつながっているのだなと感じた。

 晃洋書房さんは京都、九州大学出版会さんは福岡で、東京にいた頃も直接やりとりする機会は少なかった。それが、沖縄に来てからこうしてつながりができるなんて、本当にありがたい。
 出版社の皆さま、沖縄関連本の営業、お待ちしております。

Posted by uchinan : 09:49 | Page Top ▲